目標を与える

１９６９年７月２０日、宇宙船アポロ１１号は月への着陸に成功した。人類は初めて月面に足跡を印した。これは、多くの科学者、その他の人々の苦心の結晶だといえよう。

しかし、ここで見落としてはならないのが、アポロ計画は、ケネディ大統領が、アポロ計画は「１９６０年代の終わりまでに、アメリカは人間を月に着陸させる」と発表したことからスタートしたということである。

つまり、目標を示したことにより、多くの人々が、知恵と力が、その目標に向かって結集され、それが、実を結んだわけである。目標を示さなければ、いかに優れたものを持った人々がいても、それをどのように発揮していけばいいかが、はっきりしないから皆の働きがバラバラになってしまい、大きな力とは、なり得ない。だから指導者はその時々に応じた適切な目標を与えることが必要である。いささか極端に言えば、そのことさえ的確にやっていれば、あとは、寝ていてもいいと言ってもいい程である。

【新装版】指導者の条件　松下幸之助 著　PHP出版　2006.2.27発行　952円